量子という概念
- 基本定数であるプランク定数は鉄鋼製造での溶綱の温度測定に基因している。19世紀末の1900年12月のことだった。
- 量子の基本は電子と光子であり、波と粒の二面性をもち、二重スリット実験で観察することができる。光はエネルギーを伝達するが、それは連続的ではなく、
振動数に比例した値の整数倍となる。この時の比例定数がプランクの定数だ。
- この実験で、スリットを通過するときには波だが、スクリーンという測定体に衝突すると粒になる。この現象の解釈の方法として、アインシュタインをはじめ、
多くの論争があるが、未だに決着はついていない。
- 直径の比較で、「地球:ピンポン玉」=「ピンポン玉:水素原子」であり、この比は4億程度だ。電子は水素原子の中にあるから、その大きさの概要は想定
できるだろう。
- 極微のモノの存在を観察や測定するために、光を使ったとしても、そのために、測定物は変化してしまうから、量子の直接的な観測や測定は不可能だ。
- 物理の教科書にある水素原子の構造図で、原子核の周りの円軌道に電子が一つ回っている記憶があるが、これが誤解のもとだ。電子が一つは確かだが、
その位置がどこかは偶然的で確率的なものだから、原子核の周りの雲の中にあるようなものだ。
- ある時刻の状態が決まれば、その後の状態は完全に決定されるという決定論的な因果律が支配する古典物理学の世界だ。量子力学の立場では、電子の位置や
運動量を測定できるが、それは測定される前に電子が持っていた値を見出すことではない。測定されていない時には物理量は決まった値を持っていない。
現象は記録されるまでは現象ではない。
- ベルの定理によって、物質は決まった属性をもたず、古典的な決定論は成立しないことが明らかにされた。こうして科学的に全ての決定論的な理論が
否定された。これまでの常識では、とても本当のこととは思えない事でも,量子力学の姿をありのまま受け入れる必要があることが、科学的に証明されている。
- 確率的な存在でも個々の物理量を知る事はできるが、「位置と運動量」とか「エネルギーと時間」など双方とも同時にかつ正確に知る事はできない。
不確定性原理と言われ、波動関数からも導かれる。トンネル効果などの現象の理解に使われている。つまり、エネルギーも時間もある幅をもち、
時間が極度に縮小すれば、エネルギーが極度に大きくなることもあり、壁を通り抜けることもある。
- 観察も測定もできない量子を利用するための道具として数学がある。波動力学、行列力学、量子力学、経路積分などあるが、形式は異なるが内容は同じものだ。
実数解は存在しないので、複素数解となる。複素数は実数と虚数からなり、二元数だから、表現方法が広がる。
- 電子が複素数ではなくて、電子の姿は複素数を考えないと理解できないという意味だ。観測した結果を通じて、電子が見せる姿を数学でこういうものだ
と判断する。古典物理のような目に見えるようなイメージとは異なる世界だ。波動方程式は電子について得られた成果を集めて作り上げた認識だ。この認識で、
電子を含む量子に関する様々な情報を予測し、応用する事ができる。
- 20世紀では原爆、原発、半導体、計算機など多くの電気機器への応用があった。更に、量子力学の基本となる原理に「重ね合わせと絡み合い」があり、
これらを用いて、暗号、通信、計算などへの応用が21世紀の課題であり、各国で鎬を削っている。量子の主役は電子から光子へ移る可能性も見えている。
次回の課題としたい。
以上
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“自動車研究”の巻頭言
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