HDDについて

講師 森田矩夫 さん

[概要]
 私のパソコンから取り出した故障した Hard Disk Drive を分解して内部構造を調査した。
 その写真とHDD に関する最新技術について解説する。
  調査対象:IBM IC35L060AVER07-0 61.5GB 3.5inch 7,200rpm 2001-10製造

[写真]



写真1 内部構造



写真2 裏面形状

{余談} HDD は 1956年にIBM が発明。これは 24吋ディスク50枚から構成されていたが、記憶容量はたったの 4.4MB しかなかった3)

[基本構造]
 1.記録部
    記録ディスク(プラッタ) 3.5、2.5、1.8、1.0 吋 40GB/3.5"/枚 4枚構成
 2.読み書き部
    ヘッド           GMR 再生ヘッド スライダ(ca.1x1.2x0.3mm)の小型化
    アクセスアーム     オートリトラクト機能
 3.駆動部
    スピンドルモーター   5400、7200、10000、15000 rpm
    流体軸受         流体動圧軸受
 4.コントロール基板

[記録ディスク構造の例1)]

[ヘッド技術]
図1 ヘッド構造図2)
 MR(Magneto-Resistive:磁気の変化が電気抵抗値の変化となって現れる現象)に変わり、GMR(Giant-Magneto Resistive: 磁性と非磁性の金属薄膜を重ねた多層金属薄膜が磁性によって電気抵抗が変化する現象)を利用した再生用ヘッドが実用化。 これにより高出力が得られるため著しく記憶容量を上げることが可能となった。MR ヘッドは原理的にデーター読み出しにし か使用出来ないことから、記録ヘッドには従来の誘導型ヘッドを使用。

[ヘッドの飛行]
写真3 スライダ(四角の部分)とシッピングゾーン
 ヘッドの先端にあるスライダーは約 1mm 角の平板である。これがプラッタの回転に伴う空気の流れでプラッタ表面から約 10nm 浮き 上がって磁気情報のやりとりをしている。その状況は、BOEING 747(翼間距離 65m)が時速 100km/h で滑走路上1mm の高さで飛行し ている状況にたとえられている3)
 プラッタが回転していない時はスライダがプラッタ表面に接触している CSS (Contact Start Stop) 方式だと起動/停止の過程 でヘッドは不安定な浮上状態になり摺動・摩擦が起こるので、データが書込まれていないシリンダ (Landing Zone) で CSS を行う様 に考慮されている。しかし、最近のHDD は電源遮断時に自動的にヘッドを安全な場所に待避 (Retract) させるオートシッピング機能 を持っている(写真3)。
 ヘッド浮上面に塵埃や液滴が付着すると、大部分ははね飛ばされて問題ないが、時として、ヘッドが媒体表面のカーボン膜を削り磁性層 に決定的ダメージを与える事がある。この様にヘッドや媒体が損傷を受けた状態をヘッドクラッシュという。また、固着や結露を防ぐため 媒体表面は細かい凹凸を付けたりフッ素有機化合物が塗布されている。

[流体動圧軸受の採用4)]
 流体動圧軸受は、軸と軸受けの間に保持された潤滑油を動圧溝に寄って引き込み、高い油膜圧力を発生させて、両者を非接触状態で 回転支持する方式である。油膜の平均効果によって高い回転精度を得ることが出来るため、非常に高い部品精度と動圧溝加工技術が必要 で高価となるが、小型で高い回転精度が要求される HDD 用軸受として最近普及している。

[Hard Disk Drive メーカー]
 ○ Maxtor
 ○ Seagate
 ○ Hitachi Grobal Strage Tecghnologies(日立+IBM )
 ○ Western Digital
 ○ 富士通 東芝 Sumsung Electronics

[文 献]
1)押木満雅:「ストレージングデバイスの現状と今後の動向」 20003/09/23
2)電波新聞別冊 2003/01/09
3)伊勢雅英:「伊勢雅英の最新 HDD テクノロジ探検隊[前編]」 Enterprise watch 2005/04
4)楠清尚:「HDD 用動圧ベアファイトユニット」 NTN TECHNICAL REVIEW No.71 (2003)

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