令和5年の作品集

12月例会作品 第369回

令和5年12月15日(金) 代々木倶楽部

兼題【 ゆず湯 】


行く年や疫病神の歩く音
先生
 仙田 洋子
拭ひやる五体に柚子の湯の匂ひ 渡辺 幸江
介護者の笑みや勤労感謝の日 今林 靖博
アフガンの砂漠へ冬日ナカムラ忌 齊藤  郁
冬至湯や寄り来る柚子を突き放す 関口 経子
自由得て自在ならざり散紅葉 竹下 勝人
冬の夜の火を焚き祈る社かな 長澤 敦子
若返る夢を柚子湯に沈めをり 中野 東音
手術痕つくづく見入る冬至の湯 中村 光男
柚湯焚く五右衛門風呂の薪を割る 野口ひろし
帰省して先ずは柚子湯と母勧め 芳賀 望實
迫りくる阿蘇連山や冬至の湯 増田 浪枝

11月例会作品 第368回

令和5年11月17日(金) ネット句会(臨時)

兼題【 綿虫 】


病む鳥をあたためてゐる冬日かな
先生
 仙田 洋子
余生とておしやれもしたし菊日和 松倉美智子
箒目をただして神を迎えけり 渡辺 幸江
密に落ち寄木のごとき櫟の実 今林 靖博
粧へる山に隠れしの闇  藤  郁
菊盛る母の声せぬ母の家に 関口 経子
薄紅の雲居に白き後の月 竹下 勝人
零れ聞くベースの音よ枯葉舞ふ 長澤 敦子
天狗跳ね雲取山の草紅葉 中野 東音
戦場に続いてゐるか枯野道 中村 光男
立冬や咲く朝顔の数数ふ 野口ひろし
鎌挙げし枯蟷螂の気魄知る 芳賀 望實
老骨にもう鞭打てぬ寒夕焼 増田 浪枝

10月例会作品 第367回

令和5年10月20日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 椋鳥 】


槌の音鑿の音して秋日和
先生
 仙田 洋子
白蓮の千坪屋敷萩揺るる 増田 浪枝
車椅子押す身乗る身に秋の風 松倉美智子
水引草万葉人の通り道 渡辺 幸江
ベランダに揺れて干さるる貰い柿 今林 靖博
連奏の琴の調べや萩日和 齊藤  郁
庭を舞う蜻蛉眺めて長電話 関口 経子
遺跡掘る手許に舞ふや秋の蝶 竹下 勝人
秋祭街駆け巡る白き足袋 長澤 敦子
島影のいくつ間近に青蜜柑 中野 東音
月天心畔道黒き千枚田 中村 光男
夕まぐれ椋鳥すだく欅かな 野口ひろし
椋鳥や群にて生きし吾と似て 芳賀 望實

9月例会作品 第366回

令和5年9月15日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 月 】


鳥渡る死者の埋もれし瓦礫の地
先生
 仙田 洋子
人生はほどほどが良し月見酒 芳賀 望實
間引菜や明治の系譜子沢山 増田 浪枝
浴衣の子さらりと立ちて席譲る 松倉美智子
兄嫁の句集上梓や天高し 渡辺 幸江
縮れ葉の庭木に水を月皓皓 今林 靖博
影法師踏んで遊ぶ娘望の月 齊藤  郁
白馬麓花咲く蕎麦と走り蕎麦 関口 経子
網を打つ赤銅の腕秋暑し 竹下 勝人
月光に一際浮かぶ森の宿 長澤 敦子
松原の風の道きて月の浜 中野 東音
点滴のポール片手の月見かな 中村 光男
夏ばての身を横たへて夜半の月 野口ひろし

8月例会作品 第365回

令和5年8月18日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 天の川 】


真つ黒き折鶴もあり原爆忌
先生
 仙田 洋子
祖父逝きて七十八年長崎忌 野口ひろし
蜩や過疎の村史を拾い読む 芳賀 望實
茅葺きの山門くぐり秋の声 増田 浪枝
遠くより近づく戦油照り 松倉美智子
八月やただひたすらに鶴を折る 渡辺 幸江
朝に来て別れのソロか庭の蝉 今林 靖博
虫食いの村史読む夜の野分かな 齊藤  郁
タオル手に棚経の僧急ぎ来る 関口 経子
天の川湯気噴く地球浮かべたる 竹下 勝人
天の川天文台のドーム開き 長澤 敦子
夏木立ぬけて故郷の橋渡る 中野 東音
蜻蛉飛ぶ世に諍ひの無きごとく 中村 光男

7月例会作品 第364回

令和5年7月21日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 白南風 】


孔雀らの次々飛んで夏旺ん
先生
 仙田 洋子
対岸の見えぬ長江大夕焼 中村 光男
梅雨入りや背に腎瘻じんろうの管着けて  野口ひろし
白南風や背筋伸ばして傘寿会 芳賀 望實
大ジョッキ沖の白波合せ飲む 増田 浪枝
巴里祭眺めるだけのファッション誌 松倉美智子
半夏生藍の立ちたる硝子ペン 渡辺 幸江
赤子抱く観音堂に蓮の花 今林 靖博
白南風やきりりと締める博多帯 齊藤  郁
白南風や着物の裾を乱し行く 関口 経子
揚羽舞ふ花好きの家の客となる 竹下 勝人
突然の雷鳥親子尾根の道 長澤 敦子
島影の沈みゆくなり烏賊釣火 中野 東音

6月例会作品 第363回

令和5年6月16日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 沖縄慰霊の日 】


ごくごくと水飲むばかり沖縄忌
先生
 仙田 洋子
神宿る山や夏雲湧くところ 中野 東音
鎌倉に謀反の匂ひ七変化 中村 光男
沖縄忌摩文仁の沖の波高し 野口ひろし
黙祷に祖父母を想う沖縄忌 芳賀 望實
沖縄忌夢砕かれし墓幾つ 増田 浪枝
炎天や転ばぬようにして転ぶ 松倉美智子
時の日やカラクリ時計のんびりと 渡辺 幸江
槌音の響く首里城花でいご 今林 靖博
十薬の密に咲きたる杉生すぎうかな  齊藤  郁
薔薇園の先は軍港沖縄忌 関口 経子
毟られしぬちや沖縄慰霊の日  竹下 勝人
白浜は何も語らず沖縄忌 長澤 敦子

5月例会作品 第362回

令和5年5月19日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 鯉幟 】


喪の家の百日紅ほろほろと散る
先生
 仙田 洋子
コンサートの余韻を残し風薫る 長澤 敦子
若草や母の里なる渡し跡 中野 東音
葉桜や周回遅れの走者来る 中村 光男
ベビーカー小さき鯉の幟立て 野口ひろし
城跡に子等掲げたる鯉のぼり 芳賀 望實
目力にこだはり描く鯉幟 増田 浪枝
母の日を明治の母は知らず逝き 松倉美智子
夏めくやプレイスマット色替へて 渡辺 幸江
遠き日の祖父の鯉こく鯉幟 今林 靖博
嬰児を抱き見上ぐる鯉のぼり 齊藤  郁
どくだみの縁取る小径夕まぐれ 関口 経子
春の宵髑髏も笑まふ博物館 竹下 勝人

4月例会作品 第361回

令和5年4月21日(金) 於 代々木倶楽部

兼題【 桜 】


花散るや押し寄せてきし鯉の口
先生
 仙田 洋子
知らぬどち交はす一言初桜 竹下 勝人
春の宵ホテルのバーの異邦人 長澤 敦子
黒土の命の香り春の風 中野 東音
藤棚や本読む母と眠る児と 中村 光男
ストーマの取り替え腹に春の風 野口ひろし
訪れし廃校の花七分咲き 芳賀 望實
先ず香楽しみ新茶妻と飲む 服部 謙治
夕桜うすむらさきに池を染め 増田 浪枝
木の芽風戦争知る樹知らぬ樹も 松倉美智子
父の碑に三代揃ひ里桜 渡辺 幸江
地に咲くや触れなば崩るる落椿 今林 靖博
両の手で湯呑み抱ゆる花の冷え 齊藤  郁
花吹雪舞うあの辺が夫の墓 関口 経子

雛菊俳句会では、4月21日、代々木倶楽部で3年2か月振りに対面での句会を楽しみました。これからも月1回の顔合わせを大切にしていきたいと思います。


3月例会作品 第360回

令和5年3月3日(金)  ネット句会

兼題【 雛祭 】


春の水十指を抜いてしづかなり
先生
 仙田 洋子
江戸はこう京都はこうと雛談義 関口 経子
雛の間に寄添ふ影や兄妹 竹下 勝人
花生けて思い出ばかり姉の雛 長澤 敦子
東風吹くや一番ホームに白き富士 中野 東音
捨てきれぬわが青春の桜貝 中村 光男
雛祭り古きこけしも拭き清め 野口ひろし
空港のロビーで微笑む雛かな 芳賀 望實
山笑ふ田舎の墓に行く車窓 服部 謙治
潮の香の届く石段雛飾る 増田 浪枝
苗札に実生のいわれ書きしるす 渡辺 幸江
爆音と硝煙の街春寒し 今林 靖博
唐臼の音の響きや里の春 齊藤  郁

2月例会作品 第359回

令和5年2月3日(金)  ネット句会

兼題【 梅 】

檜皮葺き雪解滴をくぐり行く 齊藤  郁
手つかずの夫の机に水仙花 関口 経子
絵馬の垣めぐる社や梅ふふむ 竹下 勝人
北風に日溜り探す散歩道 長澤 敦子
大寒の空へ神鈴吸はれけり 中野 東音
風花や蘇州の路地の石畳 中村 光男
柊をさす家もなく日暮かな 野口ひろし
梅が香やあと数日で退院日 芳賀 望實
寒風や友の訃報に襟を立て 服部 謙治
長病みの姉の曲屋梅真白 増田 浪枝
梅白し麻酔残りし老いの眼に 松倉美智子
七つ子の初めての句や梅香る 渡辺 幸江
大皿にぎょろりと睨む金目鯛 今林 靖博

1月例会作品 第358回

令和5年1月20日(金)  ネット句会

兼題【 雪女 】


広重の空の青さや大旦
先生
 仙田 洋子
母と娘のお節料理や婿を待つ 今林 靖博
初雪や前垂れ白き六地蔵 齊藤  郁
床の間に「無事」の軸かけ師走尽 関口 経子
北窓をことりと鳴らし雪女 竹下 勝人
初春の夢多きかな太鼓の音 長澤 敦子
真ん中に聞き上手の子雑煮箸 中野 東音
雪女郎夜汽車の窓を覗きゆく 中村 光男
二年振り賑ふ氷川初詣 野口ひろし
太鼓鳴り懸かり稽古の息白し 芳賀 望實
ラグビーのボール抱きしめ突進す 服部 謙治
姿よき松にからみて雪女 増田 浪枝
寒紅の似合ふ百寿になりたしよ 松倉美智子
餅花の高々と揺れ前座敷 渡辺 幸江