令和4年の作品集

12月例会作品 第357回

令和4年12月2日(金)  ネット句会

兼題【 クリスマス 】


凍蝶を壊さぬやうに手につつむ
先生
 仙田 洋子
木枯らしが乗り込んでくる無人駅 渡辺 幸江
(皆既月食)
赤い月兎は追われ怪鬼棲む
 
 今林 靖博
星明りサンタに願うゴム長靴 齊藤  郁
大根煮好きと言う子のおませ顔 関口 経子
行間に止まりしままの冬蚊かな 竹下 勝人
視野検査終えて見上げる冬の空 中澤 啓子
夜半の冬薪の炎の登り窯 長澤 敦子
冬日より冬日へ堀に沿ひゆけり 中野 東音
点滴のボトルの向う初冠雪 中村 光男
湯豆腐や俳句は余情万太郎 野口ひろし
蝋燭の炎の影絵クリスマス 芳賀 望實
今もなお枕元見るクリスマス 服部 謙治
電飾のトンネルを抜け降誕歌 増田 浪枝
歳晩の込み合いてきし冷凍庫 松倉美智子

11月例会作品 第356回

令和4年11月4日(金)  ネット句会

兼題【 秋深し 】


草の絮遊郭跡にからみあふ
先生
 仙田 洋子
マスク下で返す微笑み秋桜 松倉美智子
振袖は祖母の手刺繍七五三 渡辺 幸江
体操の帰りの土産銀杏の実 今林 靖博
復旧の記念列車や初紅葉 齊藤  郁
炉開きや温灰に置く香二つ 関口 経子
栗を喰ふ縄文びとの貌で喰ふ 竹下 勝人
一粒の弾力指に黒葡萄 中澤 啓子
秋深き波音だけの浜辺かな 長澤 敦子
貝拾ふ夕べの浜や秋惜しむ 中野 東音
晩秋やガス灯ともる美術館 中村 光男
栖鳳の猫生くるごと秋深む 野口ひろし
熊野道古人の跡へ秋深し 芳賀 望實
コスモスの風に誘われ遠くまで 服部 謙治
がっつりとかぼすを絞り馬刺食む 増田 浪枝

10月例会作品 第355回

令和4年10月7日(金)  ネット句会

兼題【 冷やか、桜紅葉、灯火親しむ 】


山影の落ちかかりたる花野かな
先生
 仙田 洋子
広縁に手足を伸ばし星月夜 増田 浪枝
北条の滅びし地なり曼珠沙華 松倉美智子
藍染の藍の深まり涼新た 渡辺 幸江
灯火親しむ「そろそろ寝たら」と妻の言う 今林 靖博
古民家の梁に棟札栗の里 齊藤  郁
桜紅葉空き家となりし里の家 関口 経子
出迎は色なき風やさとの駅 竹下 勝人
稲刈りや日暮れて残る三角田 中澤 啓子
ビル街の四角き空の鱗雲 長澤 敦子
吹かれきし秋蝶と開門を待つ 中野 東音
冷ややか鉄の扉の領事館 中村 光男
灯火親し寝床で開く文庫本 野口ひろし
秋空や読経響きて墓じまい 芳賀 望實
今年酒父は手酌を好みけり 服部 謙治

9月例会作品 第354回

令和4年9月2日(金)  ネット句会

兼題【 初嵐、秋の川、新豆腐 】


瀬枕の音清らかに新豆腐
先生
 仙田 洋子
鴨川を背に運ばるる新豆腐 服部 謙治
待宵や英恵の蝶の衣を纏ふ 増田 浪枝
奥多摩の水のまろやか新豆腐 渡辺 幸江
震災忌今日も無事にて昼餉かな 今林 靖博
盂蘭盆会母の文箱に吾の手紙 齊藤  郁
秋の川魚と見紛う落葉影 関口 経子
釣竿をおいて一献秋の川 竹下 勝人
オール上げ流れのままに秋の川 中澤 啓子
人去りし砂に足跡秋の海 長澤 敦子
みちのくに芭蕉をたづね秋の川 中野 東音
白木槿古刹に残る大刀の痕 中村 光男
豆腐屋に新豆腐かと尋ねけり 野口ひろし
敗戦忌サイレン響く過疎の村 芳賀 望實

8月例会作品 第353回

令和4年8月5日(金)  ネット句会

兼題【 涼し、ひまわり、祭 】


スリッパを脱ぎ散らかして避暑の宿
先生
 仙田 洋子
向日葵へ託す祖国や避難民 芳賀 望實
炎天や沖縄復帰五十年 服部 謙治
祭太鼓鉄都の若衆気炎上ぐ 増田 浪枝
八月や昭和を思ふ歌謡祭 松倉美智子
古里の夜はひとしほ灯の涼し 渡辺 幸江
朝涼し老犬の乗る乳母車 今林 靖博
立坑の闇の深さや風涼し 齊藤  郁
風に揺れ撫子ゆるりほどけゆく 関口 経子
救急の搬送急かす蝉時雨 竹下 勝人
向日葵も塀にもたるる昼日中 中澤 啓子
せせらぎに笹舟浮ぶ涼しさよ 長澤 敦子
ひまはりの高々日露戦役碑 中野 東音
祭笛吹く娘や揺るるイアリング 中村 光男
鉦太鼓三年振の山車の列 野口ひろし

7月例会作品 第352回

令和4年7月1日(金)  ネット句会

兼題【 梅雨、蟻、夏草 】


曝書して我が青春の太宰かな
先生
 仙田 洋子
夏草を嗅ぎて尿する子犬かな 野口ひろし
点滅の踏切先の小紫陽花 芳賀 望實
廃線の跡の隠れて茂りかな 服部 謙治
辻々の京のうどん屋走り梅雨 増田 浪枝
湯上りや母の仕立てし古浴衣 松倉美智子
夏草の刈られてありぬ県境 渡辺 幸江
慰霊の日路傍に揺れる春紫苑 今林 靖博
座敷這うワシワシワシと大百足 齊藤  郁
蟻一匹墓前の花に隠れいる 関口 経子
遠い目で海見る少女夏帽子 竹下 勝人
色褪せし日傘頼りに街歩く 中澤 啓子
カメラ据え翡翠を待つ夕日かな 長澤 敦子
日盛りをおろおろ賢治にはなれず 中野 東音
蟻の列戦火の中を乱れずに 中村 光男

6月例会作品 第351回

令和4年6月3日(金)  ネット句会

兼題【 夏の海、青葉、短夜 】


漆黒の馬体かがやく麦の秋
先生
 仙田 洋子
角打ちの仲間の会釈男梅雨 中村 光男
短夜や耳底に響くシンフォニー 野口ひろし
磐梯の山黒くなる青葉かな 芳賀 望實
亡き友の残せし言葉夏の月 服部 謙治
彼のひとの胸まで泳ぎつきし海 増田 浪枝
六月や長寿祝わる誕生日 松倉美智子
シャンプーの匂ひする子と夕端居 渡辺 幸江
夕焼や干し物畳む老夫婦 今林 靖博
沖縄の少女の御下げ慰霊の日 斎藤  郁
若芝やフリスビー飛ぶ小犬跳ぶ 関口 経子
青鷺の一歩に時の止まりける 竹下 勝人
閉門を告げる鐘の音青葉風 中澤 啓子
夏の浜つま先歩き砂の上 長澤 敦子
麦秋や夕づく里の榛名山 中野 東音

5月例会作品 第350回

令和4年5月6日(金)  ネット句会

兼題【 鶯、五月、水芭蕉 】


帽子飛ぶ水芭蕉咲く方へ飛ぶ
先生
 仙田 洋子
五月来ぬ五重塔と雲仰ぎ 中野 東音
つばくらや八百屋に揺れる吊るし笊 中村 光男
北国や水芭蕉咲く独身寮 野口ひろし
片付けを終へし新居や春夕焼 芳賀 望實
妻と行くせせらぎの径水芭蕉 服部 謙治
夏兆す根付けの鈴の夕ごころ 増田 浪枝
飴色の明治箪笥へ大西日 松倉美智子
少年のサドルを上げし端午かな 渡辺 幸江
道塞ぐ花の絨毯八重桜 今林 靖博
重箱に五色の寿司や五月晴れ 斎藤  郁
父からの南部鉄瓶新茶汲む 関口 経子
潮騒の中へ五月の丘下る 竹下 勝人
癒えぬ手を五月の空に翳し見る 中澤 啓子
遠くより我を呼ぶごと水芭蕉 長澤 敦子

4月例会作品 第349回

令和4年4月1日(金)  ネット句会

兼題【 春雷、草の芽、春の山 】


大仏のまぶた動きぬ春の雷
先生
 仙田 洋子
花の名を尋ねて笑みぬ春の山 長澤 敦子
光曳き降り立つ鳥や水の春 中野 東音
城下町見晴らす丘や草芽ぐむ 中村 光男
また微熱余命を思ふ春夕べ 野口ひろし
故郷発つ十八歳や春の山 芳賀 望實
春の風座席の下の盲導犬 服部 謙治
春の野やピンコシャンコと牛跳ねる 増田 浪枝
四月馬鹿年金の減る物価高 松倉美智子
ビル群の壁のわれ目に名草の芽 渡辺 幸江
草の芽や地蔵微笑む交差点 今林 靖博
靴底に大地の力草芽吹く 斎藤  郁
春の山だし巻き卵と握り飯 関口 経子
下萌や軍靴に踏まれまた踏まれ 竹下 勝人
車椅子柳の芽へと指伸す 中澤 啓子

3月例会作品 第348回

令和4年3月4日(金)  ネット句会

兼題【 春の宵、草餅、春雨 】


春宵の怪談語る金歯かな
先生
 仙田 洋子
繰り返すピアノエチュード春の宵 中澤 啓子
春の宵一人窓辺でカプチーノ 長澤 敦子
薄氷や戦火のくにを身近にし 中野 東音
不揃ひの母の草餅家苞(いえづと)に 中村 光男
喜寿過ぎて今が一番春の宵 芳賀 望實
御松明火の粉浴びんと手を掲げ 服部 謙治
抜き襟の素肌にぽつり春の雨 増田 浪枝
春光やがらんとしたる路線バス 松倉美智子
草餅や昔ばなしの弾む母 今林 靖博
読み止しの本に折鶴春の宵 斎藤  郁
春雨や中々進まぬ古吟刺し 関口 経子
鉄瓶は囁くごとし春の雨 竹下 勝人

2月例会作品 第347回

令和4年2月4日(金)  ネット句会

兼題【 寒卵、大根、春隣 】


春隣うすむらさきに暮れにけり
先生
 仙田 洋子
地の力吸つて重たき大根かな 竹下 勝人
焼きあがるパン待つベンチ春隣 中澤 啓子
火山灰かぶり大根堂々と 長澤 敦子
けもの道ぬけて祠(ほこら)や霜の花 中野 東音
窓凍る北京の夜や羊鍋 中村 光男
早朝の妻の寝床へ湯たんぽを 芳賀 望實
古本屋出であてどなき冬の暮 服部 謙治
寒卵懐に抱き農夫来る 増田 浪枝
着ぶくれて帰りの席も譲らるる 松倉美智子
畑一面湯気沸き立つや春隣 今林 靖博
冬の蝶広げし翅の薄さかな 斎藤  郁
寒水を打って糠床守り継ぐ 関口 経子

1月例会作品 第346回

令和4年1月9日(日)  ネット句会

兼題【 去年今年、初景色、初夢 】
  
一人居を皆に守られ去年今年 関口 経子
初稽古合はぬリズムに笑ひ合ふ 竹下 勝人
初雪や朝のサイレン駆け抜ける 中澤 啓子
武蔵野の木々の目覚めや初景色 中野 東音
寒波来る予報士の声改まり 中村 光男
初景色あと十年は生きたいな 芳賀 望實
去年今年湯船に願いふくらませ 服部 謙治
門扉開けノックは無用去年今年 増田 浪枝
追ひつけぬデジタル社会去年今年 松倉美智子
残響と機影一筋初景色 今林 靖博