令和3年の作品集

12月例会作品 第345回

令和3年12月5日(日)  ネット句会

兼題【 山茶花、手袋、時雨 】
  
極厚の手袋耳に夜明け道 今林 靖博
山茶花や異郷に妹永眠す 阪下美代子
何もかも片を付けたき師走かな 関口 経子
ベランダの隅にこつそり吊し柿 竹下 勝人
落ち葉走る乾いた音を引き連れて 中澤 啓子
武蔵野に一番星や冬木立 中野 東音
地下都市の出口に迷ふ十二月 中村 光男
白手袋ピッチ上げるや箱根道 芳賀 望實
枯れ蔦やオフシーズンの甲子園 服部 謙治
國を去る新妻の背に初時雨 増田 浪枝
元気もらう佐藤愛子や九十の冬 松倉美智子

11月例会作品 第344回

令和3年11月7日(日)  ネット句会

兼題【 花野、新米、秋寒 】
  
冬うらら八十路の歌手の美声かな 松倉美智子
嫁ぎ行く届出に署す暮の秋 今林 靖博
新らしき句友を得たる花野行 阪下美代子
実むらさき見様見真似の太極拳 関口 経子
草の露天地まるごと呑み込みぬ 竹下 勝人
お土産は友が作りし今年米 中澤 啓子
誰彼の息災秋の雲に問ひ 中野 東音
大花野一人遅れのウオーキング 中村 光男
スーパーに競うブランド今年米 芳賀 望實
山頂のホットコーヒー草の花 増田 浪枝

10月例会作品 第343回

令和3年10月3日(日)  ネット句会

兼題【 竜胆(りんどう)、霧、身に入む 】


風の声水の声する黄落期
先生
 川辺 幸一
身に入むや父の便りの二行半 増田 浪枝
大窓に月の行方を追ひてをり 松倉美智子
コロナ下の結納成りて今年酒 今林 靖博
十月や九十の坂をのぼり初む 阪下美代子
ケルンまで竜胆の咲く尾根をゆく 関口 経子
身に入むや愛聴盤の瑕(きず)の音 竹下 勝人
来ぬバスを待つバス停も霧の中 中澤 啓子
湯の街の山から沖へ天の川 中野 東音
煙突の大きな湯の字鰯雲 中村 光男
霧晴れて被曝の森に日が昇る 芳賀 望實

9月例会作品 第342回

令和3年9月5日(日)  ネット句会

兼題【 秋気、台風、葡萄 】


秋の風街のコンビニ近くする
先生
 川辺 幸一
接種後の紫斑うすれて夏行けり 松倉美智子
セミ飛びぬ一吹きのみの霧シャワー 今林 靖博
静寂の宙に立ちたる五山の火 関口 経子
鋼剪る油のにほひ蝉時雨 竹下 勝人
秩父嶺と空の境や秋気澄む 中澤 啓子
弾痕の城門にたつ秋気かな 中野 東音
梨冷たし明日は手術といふ夕べ 中村 光男
住職のリモート読経秋の風 芳賀 望實
名月やピアノの響き透き通り 服部 謙治
児の口に余る葡萄の粒太し 増田 浪枝

8月例会作品 第341回

令和3年8月1日(日)  ネット句会

兼題【 草いきれ、晩夏、冷酒 】


水音や器はどれも今年竹
先生
 川辺 幸一
双手より砂はらはらと夏果てぬ 増田 浪枝
朝涼や目で追ふ先に一番機 松倉美智子
アルプスを散策したし雲の峰 今林 靖博
ひとはけの雲を肴に冷酒かな 竹下 勝人
荒川を撫で行く風や晩夏光 中澤 啓子
夏帽子並んで海に向ひをり 中野 東音
かなかなや輪廻を語る尼法師 中村 光男
サロマ湖の夕日の水面晩夏なり 芳賀 望實
稲光俳句の下五閃けり 服部 謙治

7月例会作品 第340回

令和3年7月4日(日)  ネット句会

兼題【 燕の子、網戸、夏の山 】


吊り橋の揺れの行き着く夏の山
先生
 川辺 幸一
消印に父の故郷夏の山 服部 謙治
かくれんぼ児を弾き出す夕立かな 増田 浪枝
病む友の左手書きの夏便り 松倉美智子
食拒む孫に見せたし燕の子 今林 靖博
赤潮と言ひて漁師の立ち尽くす 竹下 勝人
梅雨晴やタオルに残る日の匂い 中澤 啓子
大漁旗に託す復興燕の子 中野 東音
蟻登る世界遺産の高炉跡 中村 光男
廃坑のレールの錆や夏の山 芳賀 望實

6月例会作品 第339回

令和3年6月6日(日)  ネット句会

兼題【 虹、新緑、青蛙 】


青岬ホテルの椅子が海を向く
先生
 川辺 幸一
雨あがり大虹映る千枚田 芳賀 望實
新緑や笑顔で話す乙女たち 服部 謙治
渓谷の虹深ぶかと弧を描く 増田 浪枝
夏帽子八十路終りの衝動買 松倉美智子
思い出も古きままなり更衣 今林 靖博
青蛙跳ぶを真似しておさな跳ぶ 関口 経子
栴檀の散り敷く道や夏に入る 竹下 勝人
新緑や指の包帯まだ取れず 中澤 啓子
夏霧のはれゆく里や義民の碑 中野 東音
武道具を背(せな)に少年青葉風 中村 光男

5月例会作品 第338回

令和3年5月2日(日)  ネット句会

兼題【 柳、桜餅、春惜しむ 】


巫女たちの箒が揃う樟落葉
先生
 川辺 幸一
蝦夷富士を背(せな)に馬の仔立上がる 中村 光男
ネジを巻く形見の時計春惜しむ 芳賀 望實
いさかいのあとの煎茶と桜餅 服部 謙治
人力車走る岸辺の柳かな 増田 浪枝
花しべも土に還るや春惜しむ 今林 靖博
車窓より見える限りの春惜しむ 関口 経子
老二人語らひ歩む若葉道 竹下 勝人
桜餅一つと言えず二つ買う 中澤 啓子
雨粒のふつくらはしる藤の花 中野 東音

4月例会作品 第337回

令和3年4月4日(日)  ネット句会

兼題【 花の雨、蜆汁、若草 】


ほとばしる富士の湧水花辛夷
先生
 川辺 幸一
昼酒に仰ぐ窓越し花の雨 中野 東音
リハビリの踏み出す一歩春の土 中村 光男
若草や地蔵の赤いよだれかけ 芳賀 望實
若草や少女四人の笑い声 服部 謙治
遅桜一老木の根の太き 増田 浪枝
星の人今宵は呼びて花見酒 松倉美智子
深酒や朝餉にそつと蜆汁 今林 靖博
花の雨静かに暮れる三春かな 関口 経子
散り初むや雨の堤のさくら花 竹下 勝人
風に舞う花びら今日は旅立ちの日 中澤 啓子

3月例会作品 第336回

令和3年3月7日(日)  ネット句会

兼題【 春風、野焼き、さくら貝 】


畔焼くや日曜だけの農を継ぐ
先生
 川辺 幸一
春風の先へ先へと子ら走る 中澤 啓子
引き波の砂に掬ふや桜貝 中野 東音
春燈(はるともし)万年筆で書く手紙 中村 光男
見舞い来し君の笑顔や春の風 芳賀 望實
幽閉の暗き洞穴春寒し 服部 謙治
防人の母恋ふ浜や桜貝 増田 浪枝
啓蟄の虫もおどろく陽気かな 松倉美智子
潮騒の幽かに聞こゆ桜貝 今林 靖博
桜貝遥かに望む伊豆七島 関口 経子
巻きのぼる渦の虹色しゃぼん玉 竹下 勝人

2月例会作品 第335回

令和3年2月7日(日)  ネット句会

兼題【 寒梅、豆撒き、薄氷 】


坂東の風と光と冬田道
先生
 川辺 幸一
みつしりと太陽を詰め熟蜜柑 竹下 勝人
薄氷小さき指先そっと触れ 中澤 啓子
薄氷の輝きを踏み踏みゆけり 中野 東音
寒梅や宗家の蔵の白き壁 中村 光男
コロナ禍に時間の積み木冬茜 芳賀 望實
寒梅や人のまばらの偕楽園 服部 謙治
筑紫路や梅六千本の匂ひ立つ 増田 浪枝
役所あとに建ちし託児所梅ふふむ 松倉美智子
峠越えライトに映ゆる闇の雪 今林 靖博
福豆の両手に余る我が齢 阪下美代子
薄氷を捧げ持つ子の得意顔 関口 経子

1月例会作品 第334回

令和3年1月10日(日)  ネット句会

兼題【 年惜しむ、年用意、初湯 】


和菓子屋に大き赤べこ鏡餅
先生
 川辺 幸一
どんど爆ぜ子等跳び退きて大笑い 関口 経子
眼福や鳥獣戯画の初笑 竹下 勝人
小筆より墨の香匂う師走の夜 中澤 啓子
読み返すスマホメールや年惜しむ 中野 東音
海原に昇る太陽初湯かな 中村 光男
亡き友のアドレス消すや年惜しむ 芳賀 望實
一年の計巡らせる初湯かな 服部 謙治
新築の諸国銘木年新た 増田 浪枝
幸せの窓とかぎらぬイブの夜 松倉美智子
人の背が並ぶ浜辺や初日の出 今林 靖博