パソコンを使ってCD録音図書を作る

講師 天野雅夫 さん

 天野さんは視覚障害者のために、パソコンを使ってCD図書を作るボランティア活動をされておら れます。
 今回、その状況と、技術内容について講義をしていただきました。

DAISY録音図書とは

 DAISY録音図書とは、視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のために、デジタル技術を 使った国際規格で録音された録音図書等のことを云います。
 当初は、主として「音」を扱い、視覚障害者を中心に活用されましたが、文章(TEXT)や画像を同期させ て扱えるようになり、マルチメディア図書として学習障害、認知・知的障害(ディスレクシア)の人々へ提供 されるようになってきています。
 日本に於いては、マルチメディア図書はまだ緒についたばかりの段階であり、CDに録音されたDAISY- 図書(音声)を視覚障害者へ提供するのが主流になってきています。とはいっても、まだカセットテープを 媒体とした録音図書が全盛であり、「テープ録音図書」が各自治体の中央図書館や点字図書館、福祉に 関連する施設などに所蔵され視覚障害者に利用されています。また視覚障害者が個人的に所有して いるテープ録音図書も莫大な数にのぼり、或る意味では障害者の障壁になっています。
 現在でも各地のボランティアの「朗読グループ」によって支えられ、各種図書、論文、講演録、広報、 取扱い説明書、マニュアル、技術資料、新聞、雑誌など、数多くの「テープ録音図書」が視覚障害者に 提供されています。ごく一部は直接CDに録音されたものもありますが、まだ、しばらくは「テープによる 録音図書」が続くものと思われます。というのは、直接CDに録音する機器の取扱いの問題や、朗読者の 意識の問題、利用者の慣れの問題などがあるように思われます。
 以上のような次第で、視覚障害者にとって「テープ録音図書」から「DAISY録音図書」への再構築が 大きな期待でもあり、また課題でもあります。

テープ(アナログ)図書の欠点

 現在、視覚障害者にとって最も一般的な「テープ録音図書」には、不便な点が幾つかあります。

 このような不便さは一部デジタル技術を使った音楽CDやMDにも見られます。頭出しは階層構造にはなって いませんし、最大録音時間はせいぜい74分程度です。

DAISY録音図書の利点

 テープ録音図書の欠点を補って視覚障害者の読書環境を改善するために開発されたのが[DAISY− 録音図書」です。デジタルで録音された音声データと、見出しの区切りやページ数などの情報データ で構成されます。これらのデータをCDに書込み、それを専用の再生機(プレクストークが一般的)で聴く ことができます。

DAISY録音図書の世界標準と日本の現状

 アナログのテープ図書の規格は国によりばらばらでした。デジタル録音図書はこのようなことが無い ように、国際的に協力して統一した規格をつくるとともに、これを世界標準として育ててゆくために 「デイジーコンソーシアム」が結成されました。1997年5月に最初の会議がスウェーデンの湖畔の 小都市シグツナ(Sigtuna)で開かれたことにちなんで、シグツナ・プロジェクトとも呼ばれています。
 日本に於いては、1998年から本格的にDAISYの普及に着手され、〜2000年までに3回の厚生省の 補正予算によってデイジーの全国的な導入が実現しました。(財)日本リハビリテーション協会が受託 した事業の結果、500ユニット以上のデイジー製作システムが施設に配布され、8800台以上の デイジー仕様のプレーヤーも配備されました。約2600タイトルの録音図書、600タイトルの法令など すべての視覚障害者情報提供施設などに提供されました。
 これによって大きな基盤整備は終わり、デイジーの本格的普及のための課題は、専用プレーヤー の日常生活用具化と、全国的な録音図書総合目録の整備および製作面での総合調整などです。 現在、(財)日本リハビリテーション協会が中心となり、デイジーの普及や技術開発、図書製作、 図書開発などの実施、啓蒙、調整などを行っています。そして各地のボランティアグループや、自治体 の図書館、点字図書館等でデイジー図書の製作や普及に取り組んでいます。

DAISYの関連するソフトウェア

DAISYの関連するハードウェア

 DAISY図書の編集、CD作成を前提

 注意事項:DAISY図書の作成に際して、著作権問題に充分な配慮をして事前に解決をしておく。

NPO法人「DAISY TOKYO」の概要

 1998.9に「ボランティアグループ DAYSY TOKYO」として10名の有志で発足、厚生省のプロジェクト に参加した。1999のプロジェクト終了までには470タイトルを完成させた。また、利用者(視覚障害者) の一人一人の希望に応じて、所有のテープのDAISY化に応じてきている。
 東京都に特定非営利活動法人(NPO)設立申請を行い、2000.8に認定された。この法人の目的は 「視覚障害者やその他の読書困難者に対して、デジタル録音図書の製作に関する事業を行い、 それによって視覚障害者等の読書環境の改善に寄与する。」である。
 DAISY図書の作製はもとより、ボランティアの育成や、他のボランティアグループへの指導、応援、 新技術への対応・研究、社会への啓蒙、普及など幅広く活動している。  法人であるので、定款を制定し、事業計画、予算案、事業報告、決算報告、総会の決議報告などを 毎年、東京都へ報告している。組織としては、理事長、副理事長と理事5名、監事1名の役員から なり、この他にスタッフとして11名のメンバーで会の運営をしている。
もちろん理事長以下スタッフのメンバーまでボランティアであり、私生活のかなりの時間を犠牲にして 奉仕の精神でこれらの仕事に取り組んでいる。
 一般会員はボランティア会員と利用者会員(視覚障害者)からなり、それぞれ若干の会費負担をする ことになっている。

                              以 上                      							

  注:本資料はDAISY TOKYO編「DAISY編集初級講習会 参考資料」から一部引用した。			


参考資料

DAISY図書作成の流れ(概要)
1編集方針の決定階層やセクションの立て方を決める 構想の決定原本、録音テープ
2GoldWaveで音取り各機器の接続、GoldWaveの設定
音取り監視、音量調整
D-Drive等に保存
Waveファイルの生成
(テープ片面単位で1ファイル)
テープデッキ
パソコン GoldWave
必要ならAudioインターフェイス
3音量調整、音質調整、一部削除、挿入,追加GoldWaveの各機能を使う Waveファイルの修正録音テープの良非により所要時間が大きく変わる
4編集画面への展開sigtuna2.0のWaveImport機能を使う Waveファイル→Sigutuna編集画面へ雑音が大きくフレーズが切れない時は適宜切断
5DAISY編集作業編集画面上で、セクションの分割・統合・移動、フレーズの分轄・統合・削除、 ToCリストの記入、ページ付け、階層付けなど 編集方針に従って実施音に出して聴きながら実施
6書誌情報の記入Sigutuna infoを開き所定事項を記入 .書名、著者、発行所、製作担当者、音訳者、ISDNなど
7フレーズリストの整理
プロジェクトの整理
Sigutunaの機能で実施 .削除フレーズ
不用ファイルの整理
8ビルトブックSigutunaの機能でDAISYフォーマッに変換、チェックにかかれば修正 編集内容ホルダーとbokファイルの生成.
9DiscInnfoの作成DIMakerで作成 discinnfoファイルの生成DAISY図書のテキスト情報
10CD-Rへ焼きつけ焼付ソフトで実施 編集内容ホルダー
discinnfo、bokファイル
EasyCreator、Drag'nDrop、WinCDRなど
10'MOにコピー・DAISYTOKYOへ編集結果を納品する場合はMOへコピー
・編集に伴う特記事項を連絡表に記し添付
DAISY TOKYO本部スタッフにより検査後CDに焼きつけるコピーするもの
・編集内容ホルダー
・discinfoファイル
・bokファイル